元気に飛び跳ねたり、想定外の動きをすることも多い子供たち。最近では幼少期から本格的なスポーツに取り組まれるお子さんも増えてきています。子供の骨は大人と違い、さまざまな点で大きく異なっています。形状的な問題だけでなく成長過程による変化が著しい年代でもあるため、親御さんにもぜひ知っておいていただきたい注意点がいくつかあります。まだ自分で症状を上手く表現しきれない年代でもありますから、お子さんの様子をよく観察し正しく対処する必要があります。よくある小児のトラブル事例を少しご紹介いたします。, A.子供の骨は日々成長しています。成長期の骨は端と端を伸ばしながら大きくなっていきます。骨の“成長線”という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この成長線とは、まさに成長過程の骨と骨とが接合し合った関節内部にある軟骨組織の増殖で現れる線を意味します。正式には骨端線(コッタンセン)と言います。増殖した軟骨細胞はやがて硬い骨に変化します。その過程を繰り返しながら子供の骨は大きく伸びていくのです。しかしながら、骨端線まわりはレントゲンでは黒く写り見えにくいものです。明らかな異常でなければなかなか判別しづらいのが現状です。だからこそ、整形外科での精緻な専門的診断を加えることが重要となります。, A.子供の骨の大きな特徴は柔らかでしなやかなところです。ゆえに大人のような硬い骨がポキっと折れるような折れ方と違い、草木が曲がるような繊維質が強い不完全な折れ方をすることが多いです。加えて子供は痛みに強い傾向があります。もちろん大人と同じように強い痛みを生じることもありますが、骨が柔らかく骨折のズレが少ないことで痛みや症状をあまりお子さん自身が感じないケースもよくあります。成長期に重要な骨の異常を見過ごしてしまう可能性もありますので、特に痛みを訴えない場合でも、, といった症状がみられる場合には、通常の打撲や捻挫ではない可能性があります。親御さんだけで判断せず、整形外科にまずはご相談されることをおすすめします。, A.子供の骨は柔らかいがゆえに、大人とは違う折れ方をする傾向があるので注意が必要です。, 乳児においても骨折することがあります。特に注意すべき部位は鎖骨です。ちょっと目を離した隙にベビーベッドやソファから落下し、鎖骨を損傷してしまう事故が目立ちます。抱っこされたりオムツ替えの体制を取る際に痛みを感じて泣くケースが多いです。乳児はどうしても泣く回数が頻回なためその原因は掴みにくいものですが、決まった動作をするたびに激しく泣いたりするなど、気になる出来事や症状がみられる場合には一度整形外科にご相談いただければと思います。, 転倒等により手を強く突いた際に手首を損傷するものです。手首に腫れや動かしにくさを感じる場合には骨折の可能性があります。ただし、お子さんの場合には損傷が軽い場合、全く手が機能しないということはありません。そのため発見が遅れがちになることも少なくありません。, ひじから下の部分の前腕部は二本の大きな骨に支えられています。そのうち親指側にある骨を橈骨(トウコツ)と呼びます。この橈骨が若木骨折するケースは非常に多いです。ズレが軽度な場合には湿布のみで対応することも可能ですが、通常はギプス固定で治療します。, 手首には8つの骨があります。その中の舟状骨と呼ばれる部分は、手を強く突いたときに特に折れやすい骨です。小児の手首は軟骨が多いため、レントゲンでの診断が難しい場合にはCTやMRIを用いての詳細な画像診断が必要となります。, 小児の骨折として多い箇所です。転倒などの際にひじや手を強く突くことで損傷しやすいです。ひじはズレたまま治癒してしまうと、後になるほど外反・内反ともに腕の曲げ伸ばし機能に深刻なダメージを残します。さらに、身体の中の重要な血管や神経が通っている場所でもあるため、麻痺や知覚異常などの神経障害をはじめ、血行不良による前腕筋肉の虚血による拘縮障害を引き起こす可能性もあります。初期の迅速な治療が非常に重要となる部位ですので、強い痛みや腫れが認められた場合にはすぐに診察室までお越しください。, 転倒や落下によりひじ上部を骨折するもので、特に10歳以下の小児によくみられる骨折です。強い痛みを伴うことが多く、ひじ上部が大きく腫れ上がるのが特徴です。骨折の程度が軽い場合にはギプス固定による保存的治療を行います。骨のズレが大きい場合にはそのまま手術となることが多いです。治療はできる限り怪我をした当日中に行うことが望ましく、長期間のリハビリを要します。, 橈骨のひじの連結部分はキノコ状の形をしており、ひじを完全に伸ばした状態で手を強く突くといった衝撃を受けると、その連結部がめり込んでしまうことがあります。強い痛みと関節内出血が起きることでひじが動かしにくくなります。重度の骨折やズレが認められる場合には手術が必要となります。放置したままにするとひじ関節の機能障害に繋がります。転倒やスケートで勢いよく手を突いて転ぶなどする際によくみられる骨折です。, たすき掛けのように固定する鎖骨固定バンドで治療することが多いです。手術まで至ることはまれです。, 上腕骨頸部骨折(ジョウワンコツケイブコッセツ)や上腕骨骨頭骨端線損傷(ジョウワンコツコットウコッタンセンソンショウ)など、成長期の子供の怪我としてはあります。, 子供の骨折において最も件数が多い事例です。腫れはあるもののあまり痛みを感じないケースが多いため軽く捉えがちなものですが、数日間経過しても腫れが治まらない場合は一度診察にお越しいただく必要があります。, 骨折にまで至らない状態ですが、本人は突き指だと思い込んでいるものの実は骨折だったというケースも少なくありません。当院の診療現場においても、骨端線損傷や剥離骨折をしているお子さんは多くみられます。レントゲンを用いての詳細な診断を加えることはとても重要なことです。治療においてはシーネ固定が一般的ですが、まれに手術が必要となることもあります。, 足の指部分は大人も子供も非常にぶつけやすいところです。強い衝撃により、実は骨折していたことに後から気づくことも少なくありません。ほとんどが保存的に治ります。, 足の甲の外側にある一番出っ張っている部分の骨折です。骨を強く内股に捻ったときになります。ギプス固定が必要となります。, 捻挫や打撲と混同しがちですが、痛みが長く続く場合や皮下出血が認められる場合には骨折している可能性があります。, (ソクカンセツガイカコッセツ/ハクリコッセツ/コッタンセンソンショウ)足首に強い腫れが認められる場合には、レントゲンなどの画像診断を加えることが重要です。治療においてはほとんどの場合、ギプス固定を行います。, 大腿骨は他の部位に比べて、治癒力や自家矯正力に乏しいという特徴を持ちます。後遺症が残ると、歩行や日常動作に深刻な影響を与える部位でもあるため迅速かつ適切な治療を受けることがとても重要です。, 人間の身体において一番大きく太い筋肉があるのは太腿(フトモモ)です。大腿四頭筋(ダイタイシトウキン)と呼ばれており、この筋肉が急激な動きをすると骨盤の骨が強く引っ張られて剥離することがあります。例えば大きくボールを蹴る動作や、短距離走選手など瞬発的に激しく蹴り出す動作に起こりやすい怪我です。部活動が盛んな中高生に多くみられます。, 通常であれば骨折しない程度のゆるい負荷が繰り返し加わることにより引き起こされる骨折です。針金を同じ箇所で繰り返し曲げ伸ばしすると、ある瞬間でポキっと折れるのと同じ現象です。明白な外傷はないのに、痛みを感じるのが特徴です。部活動などでハードな運動を繰り返し行う中高生によくみられます。部位としては、すねにある脛骨(ケイコツ)や腓骨(ヒコツ)、足の中足骨(チュウソクコツ)、ひじから下にのびる尺骨(シャッコツ)や肘頭(チュウトウ)といったところが主です。疲労骨折が厄介なのは、初期の段階でレントゲンでははっきりと骨折線が写らず、約3週間程度で仮骨(カコツ)と呼ばれる文字通りの“仮の骨”ができあがってから疲労骨折と判明することが多いことです。もともと痛みをあまり訴えない子供の疲労骨折はセルフチェックでは見つけにくいものです。普段からお子さんの身体の動きをよく観察し、異変を感じる場合には一度整形外科で診察を受けられることをおすすめします。, A.お子さんがいつもと違う身体の動きをしている場合や、気になる症状が数日間続いている場合には早期にご受診ください。お子さんの些細な変化も敏感に感じ取ることができる親御さんから見て、歩き方や手足の動きなどいつもと違う様子が感じられる場合には、一度診察にお越しになることをおすすめします。, 小児の身体の構造的な問題を早期に見つけ出す取り組みが始まっています小児のお子さんほど怪我は日常的に発生するものです。特に大人が見ていない環境下で起きることが多いので、どのような状態でどのように怪我をしたのかを正しく見極めることはとても大切なことです。一方で、現代の子供たちを取り巻く環境は一昔前と比べると非常に大きく様変わりしていることも事実です。日々の診療現場においても、子供の怪我は増えてきている実感がありますし、身体の構造自体にも一昔前とは違いを感じることがあります。最近では「しゃがむ」という姿勢が取れないお子さんも増加していると言われています。2016年より、学校での健康診断にも運動器を確認する項目が追加されました。筋肉や関節といった体の構造的な問題を確認するチェックです。子供は体の異変に自分で気づくことは難しい上に我慢したり痛み自体を感じにくいため、早期に異変を見つけ出すにはとても有効な取り組みとなります。お子さんに気になる症状がみられる場合には、まずは一度当院までご相談ください。, 骨折以外にも小さなお子さんによくある事例として「ひじが抜ける(肘内障)」というものがあります。急に強い力で手を引っ張られたことにより、痛みが生じて腕が動かなくなってしまう症状です。脱臼と思われがちですが、実は橈骨頭(トウコツトウ)にある輪状靭帯がズレてしまっている状態を指します。整形外科医が整復操作をすると元に戻ることがありますが、ときどき元に治まらない場合があります。その際には関節内部の骨折が疑われます。子供の場合には特に骨端線にあたる部分ですので、レントゲンでは写らない箇所となります。ひじが抜けてしまった場合には無理な力で押し込もうとせず、まずは整形外科までご相談ください。, 整形外科 リハビリテーション科 リウマチ科
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